AMT-130(uniQure社)

UniQure社が開発を進めているAMT-130はハンチンチン・タンパク質量のレベルを下げる目的で人を対象とした最初の臨床試験(第一/二相)の対象となった遺伝子治療薬です。異常なハンチンチンタンパク質は細胞ニューロンに対して有害となり、ハンチントン病の原因となっています。

AMT-130はウィルスを使い直接脳に挿入され、ハンチンチン低下分子を生成する指示をニューロンにプログラムします。細胞に直接挿入された遺伝子はそのままでは機能しません。代わりに、ベクターと呼ばれるキャリアが遺伝子を細胞内に送達するように遺伝子操作されています。ある特定のウイルスは、細胞に感染し新しい遺伝子を送達できるため、ベクターとしてよく使用されます。なおウイルスは、人に使用されたときに病気を引き起こさないように修正されています。

AMT-130は現在治験が進行中であるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)(Rocheが実施していいる治験薬)とはいくつかの重要な点で異なります。

AMT-130は遺伝子治療であり、治療を受ける患者の遺伝子構造を永久に変えることを目的としています。 AMT130はハンチンチンタンパク質を除去するわけでありません。代わりに、AMT130は、アデノ随伴ウイルス(AAV)として知られる無害なウイルスを利用して、遺伝コードのある部分のニューロンに追加されます。 そのコードは、ハンチンチンタンパク質の濃度を下げるための指示になります。ニューロンがAMT-130で一旦処理されると、ハンチンチンタンパク質を下げる分子が継続的に製造されます。 結果として、有害なハンチンチンタンパク質の生成が減少し、非常に長期間効果が持続すると考えられています。(参考:HDBuzz)

臨床試験の概要

UniQure社によると第一/二相の治験デザインの目的は安全性と忍容性であり、AMT-130薬の投与を受けることで発生すると思われる有害事象または副反応を調べることです。また、臨床試験計画では目的として有効性の評価が含まれており、ハンチントン病の進行を遅らせることが可能かを評価します。 理論的には進行を止めることができると考えられていますが、初期の試験では進行を遅延させるような証拠を示すことはほとんどありませんでした。 そこで試験目標は、治療によってハンチンチンタンパク質の生成量が減少するかどうかを確認することにしています

AMT-130 臨床試験デザインの概要
【試験タイトル】
フェーズⅠ/Ⅱ、無作為化二重盲検、シャムコントロール研究、安全性・忍容性・有効性の評価
・対象はHD発症初期の患者に対してハンチンチン遺伝子(HTT)に対してrAAV5-miHTTを導入する治療(AMT-130)
【対象患者数】
・26名
【試験方法】
・無作為抽出、並列割当(マスキング: 患者、医師、治験研究者、評価者)
【目的】
・治療
【期間】
・開始日  2019年9月6日、終了日 2022年12月
・治験完了日 2026年5月
【試験群と介入の内容】
・試験:コホート1 低用量rAAV5-miHTT(6E12 gc/subject) 単回投与 
・試験:コホート2 高容量rAAV5-miHTT(6E13 gc/subject) 単回投与
・偽コンパレータ:プラセボ手術 コホート1と2において無作為抽出しプラセボ手術を実施(髄腔内投与せず)
【主要評価項目】
有害事象の発生数とタイプ(期間:18か月):安全性は有害事象を以下のデータもとに評価
検査データ、バイタルサイン、ECG(心電図)、精神学的身体的検査、rAAV5ベクター排出、免疫反応、自殺リスク(C-SSRS)、認知評価尺度(MoCA)およびMRIによる浮腫、炎症とそれらの体積減少と構造変化
【二次的評価項目】
・CSF 変異タンパク(fM) : 疾患の進行度やAMT-130に対する反応度のバイオマーカーとして評価
・CSF/血清ニューロフィラメント軽鎖: 疾患の進行度やAMT-130に対する反応度のバイオマーカーとして評価
・統一ハンチントン病評価尺度(UHDRS):UHDRSは運動機能、認知機能、行動機能、および機能的能力をベースラインからの変化を評価
・Q-Motor:疾患の進行度やAMT-130に対する反応度の評価
・HD-CAB:発症前や初期のHD患者の認知機能を評価
・MRI(磁気共鳴画像):全脳容積、線条体容積、白質容積、灰白質容積、心室容積、皮質厚を測定
・MRS(磁気共鳴分光法):神経の健康と神経膠症は、総N-アセチルアスパラギン酸を測定することにより評価
・ニューロQoL測定:簡易で信頼度が高く有効な患者主体の報告
・HDQLIFE:HDに特化したニューロQoL測定を含んだ簡易で信頼度が高いHRQoL
・HADS(病院不安とうつ病スケール):うつ病や不安を特定するための信頼性と有効性が示されている14項目の自己報告尺度