「神経変性疾患領域における基盤的調査研究」班編
ハンチントン病と生きる ―よりよい療養のためにー Ver.2
ハンチントン病研究グループ 2017 年 2 月改訂版 より転載
http://plaza.umin.ac.jp/neuro2/huntington.pdf

残念ながら現時点では、病気の進行を止める根本的な治療法はまだ開発されていません。現在ある症状に対する対症療法やリハビリテーションが治療の中心と なります。しかし、様々な治療法が動物モデルや、ヒトを対象とした臨床試験で幅広く研究されており、将来的に有効な治療法が開発されることが期待されています。(ヒトに対する臨床試験については www.huntingtonstudygroup.org に掲載されています)

てんかん発作は若年型で頻度が高く、発症年齢が 10 歳以下の方の 1/2~1/3 でみられます。発作型は全般性強直間代けいれんが最も多く、強直発作、ミオクロ ニー発作、凝視発作(staring spell)がこれに続きます。一人で複数の発作型が認められることも、めずらしくありません。けいれんは年齢とともに減少していく傾向があります。ハンチントン病にかかっていない小児のけいれん発作と異なり、進行性ミオクローヌスてんかんという病態を示すことがあります。ハンチントン病で 特に有効な抗けいれん剤はないため、発作型や脳波所見に応じて抗けいれん剤を選択しています。

若年型ハンチントン病では、発症時に運動症状を示す方は 1/3 のみで、精神 症状や認知機能障害で発症することが多いようです。したがって初期には成人型ハンチントン病でみられる舞踏様不随意運動などの典型的な症状がなく、ほかの不随意運動を示すため、ハンチントン病であることが解りにくい場合があります。家族歴、脳画像検査によりハンチントン病が疑われた場合は前の遺伝子診断の項目に述べられていることに留意して、遺伝子診断により診断が確定できます。

症状の進行に伴って、摂食嚥下障害(食事をうまく食べることができない、 飲み込めないためむせる)が認められるようになります。ひとくち毎の食塊を小さくしたり、食形態を咀嚼が容易な押しつぶし食やペースト食にしたり、トロミをつける、高カロリーの栄養補助食品を使うなど、食事内容の工夫をするとよいでしょう。しかし摂食嚥下障害が進行すると、徐々に必要なカロリーを食事で取ることが困難となります。無理に食事をすすめると、誤嚥性肺炎や窒息を起こす危険性があります。このため様々な工夫をしても、充分なカロリーが摂食できず体重維持が困難な場合には、経鼻胃管や胃ろうを用いた経管栄養を検討した方が良いでしょう。

カタログ

介護食品、介護用具などのカタログ
(普段の介護にもカタログをみると工夫する ヒントが得られることがあります。ご参考 にして下さい)

若年型ハンチントン病では、成人型と比べて症状の進行が早いことが特徴です。若年型では発症年齢が若年であればあるほど進行が速く経過が短くなります。 肺炎などの感染症や体重減少に注意しながら、出現する可能性が高い症状を予測しながら対応しましょう。どのような治療を選択するのかについては、かかりつけ主 治医、看護師、栄養士、理学療法士などの支援チームを作って、相談するとよいでしょう。

身体・知的・精神の症状によっては、障害者総合支援法により福祉サービスや公費負担医療などが提供されます。給付のためには居住地区の市区町村の窓口で手続きが必要となります。ハンチントン病は国の指定難病等医療費等による助成制度の対象疾患に当たります。保健所の窓口で手続きをすると、都道府県知事が指定する医療機関などで治療を受けたときは、ハンチントン病に関わる医療保険・介護 保険を適用した医療費から、患者一部自己負担額を控除した額が助成されます。ま た、お子さんの症状によっては、未成年の方を対象とした障害児等療育支援事業や在宅重症心身障害児者支援事業の支給を受けることが可能です。居住地区の市区町村の窓口で手続きが必要となります。所得額により支給額は変わります。また、20 歳前での傷病に対して、無拠出型の障害基礎年金を受給することが、世帯の所得額 によっては可能です。国民年金窓口センターで手続きが必要となります。