発行日 2023年4月
編 集  JHDN事務局
発行元 日本ハンチントン病ネットワーク

目  次

◇ ごあいさつ
◇ 総会(ハイブリッド)のご案内
◇ 交流会の報告
◇ 日本人類遺伝学会大会の報告
◇ ワールド・ワイド・ウィッシュ
   (大晦日イベント)の報告
◇ 会員だより ♧ みんなの近況(会員限定)
◇ 海外での新たな治験開始の案内
◇ 治療薬の動向:更新情報

ごあいさつ

加瀬 利枝(あにどる)

みなさん、こんにちは。いかがおすごしでしょうか。地球上ではトルコの大地震・ドイツ、ベルギー、パキスタンなどで大洪水。それから戦争・・・災害に遭った皆様、被害に遭った皆様にはお見舞い申し上げます。この一言もお伝えしづらいくらい大変な災害・被害です。厳しい現実の中でも世界中で支援の輪が広がり、現地の皆さんは厳しい中でも立ち上がろうと、現実から目をそらさず向き合う姿をメディアで目にすると心から応援したくなります。
 国や事情が違っても助け合う、現実と向き合う気持ちは難病の患者さん・ご家族と変わりありませんね。誰もが向き合い・助け合い・工夫を共有し合い一生懸命に前を向いて顔をあげています。
 新型コロナウイルス感染症も5類に移行しましたが、感染が収まったわけではありません。「自己責任でやってね」という事です。無責任な気もしますが、だからこそ個々がしっかり管理することが大切ですよね。
 そらから、大きな明るい話題は「WBC」侍ジャパンが世界一になりました。みんな違う球団から、また違う国から集まった選手が短い時間で絆を作り上げて勝ち進んだのはスゴイですねぇ。
人に敬意をもって接することと自分から声をかけて前に進むことを侍ジャパンから学びました。

「さあ、行こう!」

2023年度 ハイブリッド総会・交流会のご案内 

今年度の総会は集合形式とインターネットによるオンライン形式の両方での“ハイブリッド”開催になります。
現地参加とオンライン参加、どちらでもご都合のよい方法でご参加いただけます。
お申し込みは5月15日までに、出欠票を郵送またはメールで事務局にご返送ください。

日時:2023年6月24日(土)13:30~17:00  開場13:00

場所:会議室AP東京八重洲 (東京都中央区京橋1-10-7 KPP八重洲ビル)

プログラム(仮)

13:30 総会

14:30 講演
「ピアサポートについて(仮題)」
  講師 田村知英子
  (FMC 東京クリニック 
   遺伝カウンセリング部長)

15:30 交流会

17:00 終了

17:30 懇親会(希望者のみ)

待ちに待った総会&交流会です。みなさまにお会いできるのを楽しみにしております。

質問は事務局メールjhdn@mbd.nifty.comまで

WEB交流会の報告

ひろし

2022年度第2回目の交流会は12月18日(土)14時-16時にZOOMを使って、インターネット上の会議室に集まりました。前半は講演会、後半はグループに分かれて情報交換の2部構成でした。参加者は講師やボランティアを含め24名(うち初参加3名)でした。

講演会ではJHDNスタッフのマキさんより「ハンチントン病の介護と福祉サービス~困り事から必要な支援を考える~」というテーマで話題提供をしていただきました。内容は、1.困り事に応じた支援、2.介護福祉サービスの実際などを話してもらいました。

はじめに、「本人と家族の訴えに耳を傾ける」というタイトルで、マキさんの長男さんにビデオ出演していただき、「本人が何を訴えているのか」から支援の内容を考えました。わからない時は、動画を使って説明できると良いということでした。2番目に介護福祉サービスの実際です。このサービスは、ハンチントン病の診断がされており、40歳以上で保険料を払って、認知症を発症していれば使うことができます。介護保険は、介護度に応じて支給されるサービス上限まで全て受けるというよりは、必要なサービスを的確に受けることが大切ということです。

さらに、介護保険ではカバーできないサービスは、障害者総合支援法に基づくサービス(介護給付や補装具の購入補助など)を受けることができます。給付にあたり障害支援区分の認定をしてもらいましょう。最後に障害年金の話でした。障害年金申請に関わる「病歴・就労状況等申立書」の記入例が示されて、わりやすかったです。とにかく「記録が大切」ということでした。

後半は、3つのグループに分かれて「介護と福祉サービス」をテーマに参加者の皆さんと話し合いました。参加者からは、それぞれの立場や状況が話され、情報の共有をしました。「国民年金はきちっと払っておきましょう」、「障害者手帳を持つのが恥ずかしいという気持ちもわかるが、年金月数万円はありがたい」「身体障害者手帳の受給を積極的に受けましょう」「障害福祉サービスは遺伝子診断がなくても受けられる」などの意見が出ました。

最後になりましたがグループワークで書記をしてくださったボランティアの大澤さん、賛助会員のカワ子さんには心よりお礼申し上げます。

日本人類遺伝学会第67回大会 患者ブース展示の感想

マキ

2022年12月14日~17日にパシフィコ横浜で日本人類遺伝学会第67回大会が開催されました。学会のご厚意で患者会ブース展示の場をいただき、アニドル代表とマキが学会参加者に、プチ・ニューズレターやJHDNの紹介チラシをお配りして患者会活動をアピールしました。 今回は当会を含め下記の8つの団体が参加しており、他の患者会の皆さんとの交流も深まりました!また、お世話になっている先生・認定遺伝カウンセラー・JHDN事務局のある東大医科研の皆さんにも声をかけて頂いて、嬉しい再会となりました。

参加団体

1.公益財団法人日本ダウン症協会(JDS)
2.一般社団法人ゲノム医療当事者団体連合会
3.特定非営利活動法人クラヴィスアルクス
4.ミトコンドリアみどりの会
5.むくろじの会(多発性内分泌腫瘍症患者と家族の会)
6.日本ハンチントン病ネットワーク
7.Fabry NEXT
8.RB(網膜芽細胞腫)ピアサポートの会

HD治癒のための大晦日ワールド・ワイド・ウィッシュへの参加報告
New Year’s Eve Worldwide Wish to Cure HD

マキ

アメリカのHDの療養施設で働いてきたJimmy Pollard(ジム)さんから、2022年で3回目となる、大晦日のオンラインイベントのお誘いが来ました。世界中のHDファミリーを集めて、約7時間のお喋り会に、JHDNからも4人のメンバー【武藤香織さん、アニドル代表(Toshie)、会員のYoshiさん、事務局スタッフのマキ(Maki)】が参加し、好きな時に中継を見たり、世界中のHDファミリーがワイワイやっている中に混じって、ハンドサインやチャットでコメントを送ったりしました。

このイベントのなかで日本からライブでご挨拶をする時間を頂きました。2023年1月1日(元旦)の朝7時45分からの15分間がJHDNの持ち時間です。事前に香織さんと相談し各人が作成した日本語スピーチを英語に翻訳してくださり、香織さんが参加者に英語でスピーチしてくださいました。そのスピーチ原稿とYoshiさんの感想を掲載いたします。来年は、より多くの会員の皆さんと参加したいです!!

武藤香織さんのスピーチ

 The New Year’s Eve Worldwide Wish to Cure Huntington’sを企画してくれて、どうもありがとうございます。日本は米国東部時間より14時間早く、GMT/グリニッジ標準時間より9時間早いです。そのため、ここに参加している人々のなかでは最も早く2023年を迎えました。

 日本の患者数は、白人の方々より少ないですが、約1000人の患者がいると報告されています。現在は、約100人の方がJHDNの会員です。本日、日本からは私を含めて4名がJHDNというHDの患者・家族の団体を代表して、このイベントに参加しています。私の恩人であるジムから、私たちの願いを皆様と共有するための時間を頂きました。最初に、日本におけるHDに関する状況を世界の皆様に紹介し、さらに3人の仲間の紹介をします。
 私はKaoriといいます。医療社会学者です。学生の頃、1996年にHDの発症前遺伝学的検査に関する国際ガイドラインを、IHAとWFNが一緒に作成したことを知り、とても衝撃を受けました。過酷な病気と闘うHDファミリーは、医学の専門家と協働し、新しい医療技術を倫理的に適切に使うためのルールづくりに参画できるのだということを、世界中のHDに関わる人々が教えてくれたのです。その当時、日本にはHDの患者会はなく、HDファミリーは声を押し殺したように静かに暮らしていました。私は日本の家族が国際的なコミュニティとつながる支援をしたいと考えて、国際ハンチントン協会を訪問し、亡くなられたオランダのゲリット・ドマーホルトさん、カナダのラルフ・ウォーカーさんに多くのことを教えてもらいました。また、米国でHDの方々のための療養施設を運営していた、今日の主催者であるジムさんを訪問しました。患者さんの権利を最大限尊重し、規則正しいスケジュールのもとで混乱を軽減した運営に衝撃を受けました。

 2000年に日本の若いリスクを持った女性、ユキさんやカスミさんと一緒にJHDNを作りました。
二人とも、誰かのために貢献したいと考える素晴らしい人々で、彼女たちがいなければ、今のJHDNはありませんでした。2000年代、とても気さくで優しいスペインのアスンさん、今日も参加していますが、IHAの会長を務めていた頃、日本から何度も私たちの参加を歓迎してくれました。残念ながら、ユキさんは既に亡くなられ、カスミさんは病気が進んで意思疎通が難しくなりました。
私たちは、彼女たちの意思を受け継ぎ、JHDNを発展させているところです。

 さて、日本では国際共同臨床試験に参加する機会がほとんどありませんでした。欧米に数十年遅れるドラッグラグの後、2012年にテトラベナジンが承認されました。2019年には、Roche社のRG6042の国際共同臨床試験に日本から参加することができました。2022年は、様々な医薬品・遺伝子治療の開発が中断になるなど、寂しいニュースが続きました。一方で、2022年には、日本では超党派の議員連盟により、遺伝差別を防止する法律案が国会で検討されました。私たちもロビイング活動を展開し、2023年には法案が提出できるようになる見通しです。遺伝差別を防止する法律ができれば、臨床試験に参加する人々にとっても遺伝学的検査を受けやすくなります。2023年は、日本を含むアジアからも多くの患者が国際共同臨床試験に協力し、そしてHDを治すという困難に挑む全ての研究参加者や研究者、開発者の尊い意思が社会から尊重され、報われる年になるよう、心から願っています。ありがとうございました。私のメッセージを終わります。では、3人の仲間を紹介します。

Yoshiさんのスピーチ

 私は、28年前に妻をHDが原因で亡くし、今は娘がHDで闘病中です。HDは希少疾患であり、その根本的治療方法が確立されていないので、何とか治療法の手掛かりと協力者を求めたくて、私は6年前からJHDNに参加しています。私は、患者及びその家族が、HDをより知ることによって、実施できる対策があると固く信じております。また、患者が長生きして、生活の質を改善するために、現実の生活での懸念事項を議論することによって、患者や医療従事者の選択肢が増えるであろうことも信じています。今回、大晦日ワールド・ワイド・ウイッシュを開催されることを知り、参加することを決めました。

 HDの厳しい現状を阻害するような社会的な壁とぶつかっても、世界中に支えあえる仲間がいることを実感すれば、私の信念はより確固たるものになるからです。更にこの機会がHDの根本的治療法の開発に従事されている医療者の方々への強力な後押しに繋がる原動力になればと願っております。世界中の皆様と共に、HDの1日も早い根本的治療法確立とHDの撲滅に向けて新年の誓いを共有しましょう。ありがとうございました。

Makiさんのスピーチ

 私の願いは、HDの患者や家族が病気を受け入れて、充実した生活を送ることです。もちろん、病気が治ってくれることが一番の願いです。私はJHDNスタッフとして、日本のHDファミリーが充実した生活を送れるように3つの取り組みを続けていきます。

1つ目はウェブサイトの運営です。英語サイトは1ページだけですが、ぜひご覧ください。私は、この後にご挨拶する代表のトシエさんの笑顔とメッセージが、あなたに充実した1日をお届けすることをお約束します。

2つ目は相談業務です。私のウェブサイトを見てくれた日本の患者や家族だけでなく、医療や介護従事者からも相談が届きます。さらに、海外からも日本の介護ケアについてメールで問い合わせが来ます。多くの方は実践的な回答を求めているので、私たちの経験をもとにアドバイスできるのは、私にとっても大きな喜びです。

3つ目は交流会の開催です。私と同僚たちは、2022年はオンラインの交流会を4回開催しました。オンラインの交流会には、毎回25名ほどが参加してくれます。リピーターもいますが、新しい参加者もいます。私は、交流会で話すこと、話をきいてもらうこと、他の人の話をきくことで充実した生活をおくることができると信じています。この素晴らしい国際的なオンライン交流会もまた、私の充実した生活に貢献していることに感謝し、2023年も世界中の皆さんと交流できることを期待します。ありがとうございました。

Toshieさんのスピーチ

 私の夫は、HDで30年ほど療養して8年前に亡くなりました。夫は、HDのせいで、人嫌いになり、感情の爆発が大きく、いつも怒っていました。その症状が苛烈だったため、私は夜中に家を飛び出して夫から逃げたこともあります。日本では、怒ったり、怒鳴ったり、暴れたりする患者がいる家には誰も近寄りません。皆さんの国ではいかがでしょうか?

 私は、夫の優しい性格をHDという病気が奪ってしまったと思っています。ただ、私が結婚した時には、すでに夫にはHDの症状が出ていました。私は、本当の夫がどんな人なのかは、HDの症状の隙間から少し覗くことしかできませんでした。

 HDの症状は日本でも海外でも、人によって大きな違いがあります。私は、HDと、そしてHDを患う夫と出会って悲しいことも悔しいこともたくさんありました。しかし、人生に役に立たない辛い経験は忘れてしまい、人生に活かせる辛い経験は忘れないものなのだと気づきました。忘れられない辛くて悲しい経験は、私が歩む人生の糧になり、二度目の失敗を防いでくれます。HDとHDだった夫は、私の隠れていた優しさ、忍耐強さ、人を思いやることが出来ることに気づかせてくれました。

 日本のHD患者・家族は、HDが遺伝性疾患であることに苦しみ、他人に知られたくないために何も言わず声を挙げず隠し通すことがよくあります。HDの症状は厳しいけれど、HDであることを隠したら、患者さんを悪い人のように扱っていることを意味します。私たちは、社会に受け入れられる努力を惜しまずに、声を上げて「助けて」と言える勇気を持つべきです。早く病気を軽減する薬が開発されるように、また根治療法が見つかるように、いつでも治験や研究に参加する準備を整えることが重要だと思います。そのためには、内に秘めているだけでは一歩も前に進みません。このような考え方は、生物学的にはHDの家系ではない私だからこその考え方です。私はこれからも自分の経験を活かして、HDの患者・家族に向き合い支え合いたいと思います。ありがとうございました。

武藤香織さんのスピーチ

 日本人にとって、新年の朝は特別です。一年で最も静寂であり、静かに新年の誓いを掲げ、一年の幸運を神に祈ることが一般的です。そのような朝に、この素晴らしいイベントに参加して、皆様と新年の願いを共有できたことは大変幸せです。本日、ご参加の全ての皆様に、たくさんの幸運と健康がもたらされますように、世界一早く新年を迎えた日本から祈っています。これで日本のコーナーを締めくくります。本当にありがとうございました。

【ワールド・ワイド・ウイッシュに参加して思うこと】

Yoshi

海外の方とのウェブ・ミーテイングは初めてでしたが得るものが沢山有りました。

 その感想の前に、私は人が何かを成そうという時の動機といいますか行動の原点に非常に惹かれます。 例えば武藤香織先生、アニドルさん及びマキさんがJHDNに於いて何故こんなに献身的に働かれているのかその行動力の原点に関心が有りました。

 今回、武藤先生始め皆様のスピーチを読ませて頂いてお心の内にちょっとは触れたかと思います。

 これらの方々への私の感謝を胸にしながら、ワールド・ワイド・ウイッシュに参加された米国、ポルトガル、スペインなど日本を含め24カ国の方々と(時差があるものの)画面を通して直接語り合うなど緊張の極みでした。(実際は各国の参加者と直接語り合うのは米国・東部に居られて今回の企画を主催されているJimmy さんになるのですが。)

 この企画は全体で延々7時間にも及びますので、最初から最後まで会議についているのはJimmy さんと運営に協力されている国のスタッフさん位です。参加者は自分の発表時間に入場するのは勿論ですが、開催中のZoom会議に入場・退場は自由に出来ます。退場する方は(おそらく殆どの人が)別れと新年の挨拶のメッセージを画面に送っていました。私は会議に遅れないように早めに入りましたが、その時はコスタリカの参加者がスピーチを行っていました。言葉が分からないのでその後画面をずっと見ていましたが参加者の中で発症している患者さんも同席してスピーチ発言しているご家族もありました。

 元日の朝7時45分から日本側JHDNメンバーの登場です。(発表時間は18分位)私は英会話には全く自信が有りませんので、私のスピーチ文面は武藤先生に発表して頂きました。画面に映った私の画像を世界のどこかの人が見ているのだと思うと気恥ずかしくて仕方ありません。発表後、Jimmy さんが私のスピーチ内容に反応して激励の言葉を掛けて頂いたらしいのですが私は「サンキューベリーマッチ」が精一杯!!ここでハタと気が付きました。アメリカにも武藤先生のような人が居り(例えばJimmy さん)ポルトガルにもアニドルさんのような人が居て、スペインにもマキさんのような人が居るんだ、ということを肌で感じました。世界のどこの国にも、アニドルさんの言葉を借りれば「HDの患者・家族が遺伝性疾患であることに苦しみ他人に知られたくない為何も言わず、声を挙げず隠し通しているのではないか?」と思います。HDに関して世界中の患者・家族と医療従事者がお互いに支えあうきっかけになれば、こんな嬉しいことはありません。ワールド・ワイド・ウイッシュは意義のある企画であり、大晦日の夜中から元日の朝であるという難しいときではありましたが、もっと沢山の人に参加してもらえたらと思います。本当にありがとうございました。

―覚えておこう、HDにとって特別な日―

ハンチントン病感謝の日 3月23日

毎年、3月23日は、1993年にHD遺伝子が発見されたことを記念して、HD遺伝子発見の研究の貢献したベネズエラのHDファミリーのメンバーに感謝し、忘れないための「ハンチントン病感謝の日(HD Gratitude Day)」です。2023年3月23日は、HD遺伝子の発見から30周年となる特別な日でした。#hdgratitudeday23 というハッシュタグで様々な指でハートマークをつくった写真をたくさん見つけることができます。

DNAの日 4月25日

4月25日は「DNAの日」(DNA day)として知られています。DNA二重らせん構造発見の論文の掲載日(1953年)であり、2003年のヒトゲノム解読完了もその日に発表されました。2023年4月25日は、二重らせん構造発見から70年、ヒトゲノム解読完了から20年の節目です。

新たな治験開始の案内

 以下、ロシュ社およびジェネンテック社のHDチーム代表から患者コミュニティに向けての書簡(2023年1月11日付け)の抄訳です。

GENERATION HD2試験(第II相試験)が始まりました。

 この試験では、治験薬トミネルセン(Tominersen)の安全性、バイオマーカー、有効性に関する傾向を異なる用量レベルで評価します。対象は、25歳から50歳でごく初期のわずかな兆候がみられるHD患者あるいは初期の顕性HD患者です。

●GENERATION HD2試験では、治験参加者を360名募り、トミネルセンまたはプラセボ(偽薬)による処置を16カ月以上にわたって行います。詳細は、ClinicalTrials.gov や ForPatients.Roche.com などの臨床試験ディレクトリに掲載されます。

●この試験は15カ国(訳注:日本は含まれていません)で実施される予定です。

 米国ではすでに開始していて、参加候補者のスクリーニング(参加資格の確認)が行われています。その他の地域については、実施施設が当局の承認を受け、参加希望者の受け入れ準備が整い次第、臨床試験ディレクトリに掲載されます。

様々な協働を続けつつHD研究を進めてきました。

 一方、2022年には、科学的理解を深めてHD研究を進めるためのたゆまぬ活動を、以下のように展開しました。

●トミネルセン第Ⅲ相試験から得られたデータや知見を、すべての主要なHD研究フォーラムで共有しました。こうした共有は、トミネルセンをはじめとするハンチンチン低下療法に関する透明性を確保してその知識をHD研究コミュニティ全体として深めるという私たちの姿勢の一環として行われているものです。

●研究活動およびパートナーシップによる

○HD 治療のための新たな創薬標的およびパスウェイの探索

○臨床試験のための革新的な測定エンドポイントの開発(HD の初期段階を中心に)

○HDバイオマーカーの理解・解釈の向上

○HD患者のQOLと負担についての確かな理解

 トミネルセン臨床開発プログラムを、より研究目的を絞って継続すると発表して以来、今回の第II相臨床試験の設計や方向性について、多くのコミュニティリーダーやご家族からご協力いただきました。これまで臨床試験に参加された方々も含め、皆さまに感謝します。研究の進歩は、このような重要なパートナーシップによってのみもたらされるものです。

Q&A

GENERATION HD2試験(第II相試験)とは?

 GENERATION HD2試験は無作為化試験で、参加者にはトミネルセンの2つの用量(60mgまたは100mg)のうち1つ、あるいはプラセボが、4カ月ごとに腰椎穿刺によって投与されます。参加者と研究チームのいずれも、トミネルセンまたはプラセボのいずれが投与されているかは知らされません。参加者全員が16カ月間の処置を完了して終了します。独立データモニタリング委員会(iDMC)が試験をモニターし、4~6カ月ごとに安全性データ、臨床データ、バイオマーカーデータを審査します。

GENERATION HD2試験の背景は?

 トミネルセンの臨床試験は、2015年以来、いくつか実施されており、GENERATION HD1と呼ばれる第III相試験もそのひとつです。GENERATION HD1では今回の試験よりも高い2種類の用量レジメンで、成人の顕性HD患者を対象に試験しました。

 第III相GENERATION HD1試験は、その主要な目的を達成できず、iDMCがベネフィットとリスクを総合的に評価した結果、トミネルセンの投与は2021年3月に中止されました。

 しかし、ロシュが第Ⅲ相試験データを入手した後に実施した探索的解析では、より低い用量のトミネルセンの使用がHDの早期段階にある若年者に有益であるかもしれないことが示されました。この解析結果は、プラセボと比較して統計学的に有意ではなく、偶然による可能性もあります。そのためGENERATION HD2試験では、前試験の参加者よりも早期のHD患者を対象に、低用量での評価を行うことにしています。

この試験はどこで実施されるのですか?

 北米、南米、オセアニア、欧州の15カ国で実施する予定です。

住んでいる場所の近くに試験実施施設がない場合、転居して試験に参加することは可能ですか?   

 参加登録は、各施設の治験責任医師が、現地の法律や規制を考慮して決定します。さらに、試験実施施設の方針、健康保険、移動の負担などの要因も、転居して参加できるかどうかに影響するでしょう。

以前のトミネルセン試験参加者は、今回の試験に参加できますか?

 プラセボを投与された参加者で、第II相GENERATION HD2試験の基準を満たす方は、今回の試験に参加できる可能性があります。ただし、今回の試験は、以前の試験で実施されたすべての施設で実施されるわけではありません。 こうした参加資格は、専門家やHDコミュニティのリーダーと徹底した協議をしたうえで決定されました。落胆される方もいらっしゃるでしょうが、今回の試験によって得られる知見をふまえ、さらなる機会の可能性を評価していきたいと思います。

HD治療薬の動向:更新情報

 研究開発型製薬企業やバイオベンチャーによるハンチントン病治療薬の最新状況をとりまとめています(2023年1月時点)。

 ハンチンチン蛋白の低下を目的とした複数の薬剤が開発されており、臨床試験の段階は第1/2相か2相です。その中の主な薬剤の開発状況について一覧表にまとめました。

 日本でも治験募集があったロッシュ社トミネルセンのGENERATION―HD1という臨床試験(第3相)では、潜在的な安全性の問題が指摘され、治験薬投与は中止となりました。
第3相試験は、多数の患者に薬剤を使用し、第2相試験よりも詳細な情報を集め、薬の効果と安全性を確認することが目的でした。あと一歩のところで断念せざるを得なかったようです。

 

ただし、2023年1月に同社は、GENERATION―HD2という臨床試験(第2相)を発表し、被験者募集を開始するとの案内がありました。15か国(日本は含まれていません)の初期の顕性HD患者(症状が出ている患者)を対象としています。試験の主要目標は副作用(有害事象)の発生や重篤度や生理学データ(白血球、ハンチンチン蛋白量など)の評価となっています。

 ノバルティスファーマ社は、脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療薬ブラナプラム(商品名 ゾルゲンスマ🄬)がハンチンチン蛋白も低下させることを見出しました。そこでVIBRANT-HDという臨床試験(第2相)を開始しました。しかし安全性の問題が発生したため中止しています。

 現時点でも複数の企業が臨床試験にチャレンジしています。

補足説明 「臨床試験とは」
患者や健康な人を対象として、医薬品や外科的手技などの治療を試験し、有効性や安全性などを検討することを臨床試験といいます。なお、企業が国(厚生労働省)から医薬品や医療機器を製造・販売する許可を得るための臨床試験は、「治験(ちけん)」と呼ばれます。
第1相:おもに安全性の評価
第2相:安全性と有効性、適切な投与量・投与間隔・投与期間の検討
第3相:多数の患者に対して薬剤を使用し、実際の治療に近いかたちで評価 

https://www.jhdn.org/latest-study/clinical-trial/